D-hutteの施主は僕の兄夫婦である。兄夫婦への新築祝いの代わりに設計監理…というにはあまりにも簡素で小さな建物ですが、僕なりに腕をふるった建物です。この小屋は兄の書斎であるのか、はたまた外物置なのか?そこらへんは設計当初から夫婦で意見の別れるところだったが、設計者としては両者との良好な関係維持を優先して口を出さない方針とした。
ちなみに住宅は兄の友人であるM建築設計室の前田氏が設計したものだ。前田氏は朴訥とした感じの良い人だが、喋らないと妙に威厳があって、いつかの忘年会で周囲から「ショーグン」と周呼ばれていたのを思い出す。建物にも氏の人柄が現れていて、シンプルで どこか懐かしさの感じる家である。D-hutteは、この住宅と、兄が力を入れた多種多様な植栽が醸しだす庭の雰囲気を壊さないよう、“雑木林の中にひっそりとたたずむ可愛らしい山小屋”をイメージして設計した。カンナ掛けしていないラフ仕上げの杉板外壁、米杉こけら葺の屋根、それらを活かす古木調の保護塗料、アンティーク調のゆがみガラス等々は、すべて住宅と庭の雰囲気から選定していったものである。
また、見た目では分からないように配慮しつつ基本性能も上げている。屋根下地には高性能の防水下地を敷設し、2重屋根で通気を確保する。断熱も厚さ5mmの遮断熱シートで覆って、書斎としてもある程度は耐えうる性能を付加している。こうして立派というには程遠いが、物置としてはオーバースペックの小屋が完成した。
その後、兄夫婦の間でどのような話合いがなされたのか不明だが、一応今のところは兄の書斎のようなものとして機能しているようである。まぁ 設計者としては書斎だろうが物置だろうが、愛着を持って建物に接してくれているのは ものすごく嬉しく幸せなことだと思う。あとは、将来にわたって この小屋の使用方法をめぐり 夫婦間紛争が起きないことを祈るばかりである。
